私たちは、高い服を買わなくなったんじゃない

洋服に対する価値感の話

アパレル業界は「厳しい」と言われ続けています。
厳しいというのは即ち、「売れない」という意味でもあります。

特にブランドもの、百貨店。
昔ほど簡単に売れなくなってしまい、ブランドの買収、メーカーの合併等は続いています。
「いまの若い人、ほんとブランドもの買わないよ」…百貨店の人から何度もこんなような愚痴を聞きました。
ファッションの専門学校生でも買わないって言うんだから。

でも、私たち。
結構、高い服買ってるよね?

 

別に高い服は売れないけど、日本はダサくない

ブランド服が売れない、高い服が売れない。
じゃあ日本はダサくなっちゃったの?…いや、そうでもない。

アパレル業界が厳しい=高い服が売れない=ダサくなってる、という図式が必ずしも成立するわけではない。だって、高い服を着ることが、おしゃれになることではないから。

むしろ、10年前より日本全体として考えれば国民のオシャレレベルはアップしているように思います。特に中高年や子供なんて、随分オシャレ化していると思います。

これは、ファストファッションに分類されるお店が、安くてオシャレなものを売るようになったのも、一つの原因でしょう。
ファッション通販でも、安くてオシャレな服がたくさん揃っています。
イトーヨカドーやイオンの衣料品売り場も、結構オシャレなんだなあ。

質は置いておいて、デザイン的には”良い”と思えるものが、安く手に入ると。

 

 

昔は、ある程度のお金を出さなければ、流行を押さえてオシャレで気の利いたファッションなんてのはなかなか楽しめなかったのですが、今は全くそんなことがありません。
それこそブランド古着市場も成長したし、昔より、お金がなくてもおしゃれが楽しめる。

むしろ、下手なブランドで買うよりも、大人ならユニクロ無印良品、若者ならRAGEBLUEやローリーズファーム辺りで揃えた方が無難にまとまるんじゃねーの?とすら思います。

 

じゃあ、みんながみんな、ブランド服を買わないかと言えばそうではなく。
その証拠にブランドってこの世にたくさん存在するし、みなさんだってブランドものを買いますよね。

私は、みんながシビアになっているのだと思います。
よりシビアに、価値を考えるようになったのだと思います。

こういうのはユニクロで十分、このポールスミスのシャツなら3万円出してもいいな、このユナイテッドアローズの上着に3万は無いわ…

こんな風に、冷静にジャッジする人が増えたように感じます。

 

 

「なんとなく」で高い服を買う人が減ったのは事実

先にも書いた通り、安いコストでそれなりのオシャレはできるようになった、いま。

昔は、そこまでファッションに興味が無い人でも、おしゃれをするには百貨店に行ってブランドものを買わなきゃいけない!と思い、なんとなく(しょうがなく)ブランドものを買っていたような人達が、たくさんいたわけです。
そんな人達が、ZARA辺り(別名:イオンの壁)で止まってしまった。

休日のイオンやららぽーとが大混雑で、百貨店がガラーンなのはこれが大きいのかなと。この現象の理由は、もちろんこれだけではないけども。

 

「それなりに見えれば良い」って気持ちの人が、一番多いって思う。
洋服で自分を表現したいだとか、特定のブランド着ることに強い意義を感じる人なんていうのは、人間全体から考えれば相当に少ない。

おしゃれに興味があるから、おしゃれなところに行くし、おしゃれな人が目につくだけ!

それなりに人とかぶらず、それなりにオシャレできればいいって人が元々大多数のはず。

今日から使える大人の男のオシャレ塾―男性ファッションの「そもそもどうしたらいいのか?」がわかる

 

そうなると、百貨店や一部ブランドは弱い。
なんとなくで来てくれていた人達が「イオンでいいや」になっちゃった。

イオンやららぽーとの専門店街でも、百貨店と同じブランドが買えちゃったりする。
そうしたら…わざわざ、行かないよね。
イオンなら家族で行けるし、ご飯も安く食べられるし、駐車料金もかからない。なにより気軽だもの。

いくらギャルソンといえど、これに5万はないわ

高い服を買う人達も、別に何でも高い物を買うわけじゃない。

きちんと選んで買っている。
ユニクロで2,900円のシャツに本気で悩む一方、アクネのジーンズ29,000円は即買いしたりする人は少なく無い。別にみんな、ケチになったわけじゃないんだよ!

ブランドネームにばかり踊らされているわけではなく、いくら好きなブランドとはいえど、お金に余裕があろうとも「これに4万円はねーだろ」とかって、冷静に考えられる人が増えたように感じる。

しっかりとした価値があるかが、重要なのだ。

 

「ブランドものを着なければオシャレじゃない」みたいな考えは消え去り。
こういうのはユニクロやH&M辺りで2000円以下で買いたいけど、いいコートなら10万円以上出すよ、みたいなお金の使いどころを考える人が増えた感じがします。

これは店員をやっていた時も、友達の話をしても、買い物をしていて周りを見ていても、日々感じていることです。

1足2,900円の靴下でも売れるものは売れていて、10万円のストールでも予約完売するものはする。
でも3足1,000円の靴下でも売れないものは売れないし、2,900円のカットソーでも売れないものは売れない。安けりゃいいってわけじゃない。

安けりゃ売れるって時代も過ぎて、価値が認められないと売れないのだと思う。
価値を考えるようになった。
値段に対する価値が、あるかどうか!

 

正直、ブランドやショップは、これからがますます勝負ではないでしょうか。
ブランド名だけで、物が売れない時代に本格的に突入しております。

Pen (ペン) 2014年 8/15号 [1冊まるごと エディ・スリマン]

ブランド名に胡座をかいていたら死ぬぞ

変に一度人気が出て、ブランド名の上に胡座をかいて、テキトーにやってきたブランドというのが淘汰されていると感じます。

私はアパレル業界で働いたことがありますが、びっくりするくらいテキトーなところはテキトーです。
こんなに名前は知られていても、それなりに全国で取り扱いがあっても、こんなにも会社やブランドは行き当たりばったりでテキトーなわけ?マジで?と、逆に驚きの連続でした。

焦って値段だけ下げたり、単純に質を落としてごまかしてきたようなブランドは、どう手を打つのでしょうか。
一度下げた値段を上げるのは難しいでしょう。
じゃあ値段はそのままで質を上げるって、いやいや厳しいねって。
ファン離れ覚悟で、ブランドの路線を変えて、やり直しますか?

忘れちゃいけない、店員含むサービス面。
店員さんとのコミュニケーションや、サービスも含めたものが、買い物の価値。
どうやったらサービスの価値を上げられる?
ここも考えなければいけないのが、ブランド。やれやれだぜ…!

トップ販売員のルール (アスカビジネス)

情報やモノが増え、流されにくくなっただけ

別に服にお金を賭けなくなったんじゃないんですよね。
ただ、価値を考えるようになっただけだと思うんですよね。

先にも書いたように、服に何万も払うような、そこまで洋服に何かしらの価値を見出す人自体は減ってしまったかもしれないけど。

でも、お金を払う価値があると思えば、ちゃんと払う人は確かに存在するのですよ。
私たちだって、やる時は、やるんだぜ!ねぇ、みなさん!

 

物が売れないのを時代のせいだとか、ただ店員の接客のせいにするとか、価値観の変化のせいにするのは、違うと思います。

逆に、きちんと作って、きちんとした形で「ブランド」として成立すれば。
名が弱くても、それなりの値段がしても、きちんとファンはついてくると思います。
それだけ、一部消費者の目は肥えてきていると思います。

…言うだけは簡単なことは、わかっています。
なんか上からで申し訳なくなるけど、でも、そう思う。

と、私は主にファッション業界側の人に言いたい。

 

で、私たち消費者は、良いと思う物はお金を出して買うべきだと思う。
なんかアレだけど、結局はそれが一番だと思う。

「ファンです、買ってないけど」じゃ、ガックリだよ。

服だけじゃなく音楽とか、あらゆるもの全て、価値があると思う物にはお金を払おう。
だからお財布と相談して買おう!価値があると思ったものは!
(若くてお金がなくてという人に無理して買えとは言わないですよ)

 

私たち消費者は、高い服を買わなくなったんじゃなくて。
モノに対して、シビアになっただけだと思う。

これから、中途半端なことを続けてきたブランドは、ガンガン潰れると思います。
でも、しっかり作り上げてきたブランドは、こういう時代だからこそチャンスもあるんじゃないでしょうか。

洋服や靴を買うとき、どんな基準で買っていますか?

参考になれば、幸いです。

4 Comments

  1. WD

    自分自身については、買う服の値段がここ数年、だんだん上がっている気がします…「MARNI、DRIESが好き、ANNさんが気になる」とかだと、そりゃそうなるなあと思います。少ない数しか買えないですが、本当に好きなものを選びに選んで買っていくしかないです。

    「下手なブランドで買うよりも〜じゃねーの?」→これは思います。無印(他はあまり知らないのですが)については、そこで揃えれば統一感は出るかなと。

    百貨店に行くことにちょっとした贅沢感を抱いて育ったので(世代的に?)、無くなったら寂しいです。でも百貨店やアパレルの業界の努力も必要なのかな…とも思います。

    「好きなブランドは、支えるような気持ちで買ってます。」→及ばずながら、自分もそういう気持ちです。メジャーになり過ぎないでほしいと思いつつ(ひねくれ)、やはり「潰れたら困る、続いてほしい」と思うので。

    • 年齢とともに買う物の単価はどうしても上がっていくと思いますよ。
      一度良い物を着てしまうと、なかなか…。
      中途半端なものに中途半端なお金を払うのが一番嫌です、個人的には 笑
      私は基本、買い物は高いか安いか、です。

      いま、材料費やなんかが上がっていて、各ブランド値上げせざるをえない状況で、小さなブランドほど厳しいと聞きます。色々なところで定番物がどんどん値上げしています…。
      結構有名なブランドでも小さな会社だと、「何月何日までに×××円ないと、次の生産ができない!」なんてこともあるんですよ。
      それで不自然に、現金の直接入る直営店でフェアやイベントをやったり…なんて。

      大メゾンは、支えてやるぜ!なんて思えないですが 笑
      小さくても頑張ってい良い物を作っているブランド、さらにスタッフの対応も温かいもので、ブランド愛を感じたりすると、ついつい…です。ちょっと高くても買っちゃいますね。
      (私はブラックなので、逆もありきで、「絶対ここでは買わねー」もありますが)

  2. SW

    いつも楽しく読ませてもらってます!
    おっしゃる通りですね。
    自分は15年ほど前は新宿伊勢丹やバーニーズで10万超えの服をガンガン買ってましたわ。今は一つも手元に残ってないですが(笑)
    当時は、ユニクロもダサかったし、まず、情報がまだまだなく、ブランド信仰みたいのがありましたね。
    あの時代にあったドメブラで、現在生き残ってる数の少なさをみると、中途半端なものは確実に淘汰される時代に変わったんだな〜と思います。
    とにかく、何をするにも「覚悟」が必要ですわ。
    「覚悟とは、暗闇の荒野に道を切り開くことだ。」byジョルノ(^_−)−☆

    • コメントありがとうございます!
      15年前…確かにユニクロはまだオシャレじゃなかったですね。
      ブランドを着る=おしゃれ、みたいな時代でした。

      15年前と比べると、個性なく中途半端にやってきたブランドは、いまも順調に淘汰されていますよね。
      超大手は別としても、流行や一時のブームに変に左右されず、ぶれずにやってきたブランドが今も残っているような気がします。

      確かに何事も「覚悟」ですね。
      生きるうえで精神的に大事なことは、大抵ジョジョに書いてあります 笑

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